383 なおし屋⑲ドライヤー

 キイロサンゴハゼ
「温風が出なくなった」と私の“お気に入り”の女の子がドライヤーを持って来た。これは温度ヒューズが切れたのに違いないと思い「任せて!150円で治るから」と言って分解にとりかかった。温度ヒューズにテスターを当てて、切れているのを確認するまでは簡単だったが、その先が大変!。ドライヤーは細い筒の中に、ヒーターが組み込まれていて、温度ヒューズはその先にセットされている。そこまで分解しようとすると、どうしても手元スイッチを含めてバラさねばならない構造になっていた。ちょっとヤバイ感じの回転スイッチなので注意しながら分解していたのに、ここで私のよくやる失敗が出てしまった。小さなスプリングピンがピーンと、机の横のゴミの山の中にに飛び込んでしまった。小さな、しかも形も確認していないピンをゴミの山から探すのは絶望で、安請け合いをしてしまったこのドライヤーは、修理不能となってしまったのである。ナサケナーイ!。
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382 なおし屋⑱アルミサッシ

  アカオビシマハゼ
  新築(昭和59年3月)から30年が過ぎ、太平洋からの潮風にさらされているアルミサッシの傷みが各所に見られるようになってきている。半年ほど前の事、作業場のドアがはずれた。そこは海水が飛び散る事が多い所で、アルミサッシの枠が錆びて溶け、ドアの蝶番のビスが浮いてしまっていた。これを修理するには、モルタルをはがしてサッシの枠ごと入れ替えねばならない。しかしそれには時間も費用もかかる。“なおし屋”は「見かけは気にしない、要は機能のみ」と云うのが信条である。傷みのひどい部分のアルミをサンダーで大きく切り取って、その部分を木材に置き換えて蝶番を止めなおした。こうしてドアは約一時間で機能を取り戻したのである。

381 なおし屋⑰バルブとレンチ

 アゴハゼ
  イルカプールの排水管は口径30cmで、塩化ビニール製のゲートバルブが深い暗渠の底に座っている。そのヘッドを2mほどの長さのレンチで回す構造である。しかし鉄製のレンチは、五年も持たずに首が折れた。そこで木材と塩ビパイプでつくりなおした。それから五年ほどして、今度はバルブヘッドのヘソが取れてしまった。仕方なくその下部のプーリーを四角く削って、塩ビパイプをかぶせるようにしたレンチを作った。しかし数年で滑りはじめたので、今度はプーリーに穴をあけてボルトを通し、それに引っ掛けて回すようにした。竣工から30年が過ぎたが、私が修理を続ける限り、あと10年くらいは何とかなりそうと思っている。

380 なおし屋⑯門扉

シロウオ
 夜間だけ閉めるジャバラ門扉は、アルミ製で塩風にさらされているので、リベットが錆びて折れてしまう。つなぎの軸のステンレスパイプの中にリベット本体が折れ残るので、これを取り除かないと新たなリベットが打てない。はじめはドリルで穴を開けて取り除いていたが、連れ回りして手間かかかった。そこで折れ残りを押し込む工具を考案した。しかしそれよりも、以前に取り替えた古い門扉の軸が役に立った。ステンレスの軸を3年ほど海水に漬けておくと、アルミのリベットの残骸だけが溶けだして、再利用出来る状態になる。そんな予備品を十数本用意してあるので、リベットが折れると軸ごと取り替えて、止めなおしが出来るようになっているのである。 

追伸 今週からイラスト係りが日奈(ひな)ちゃんにかわります。  

379 なおし屋⑮玉網

クモハゼ
 お魚を扱う水族館では、玉網は必需品である。私は入社以来、先代から引き継いだステンレス枠の玉網を修理しながら使い続けていた。しかし10年余り前からは、若い飼育員が市販のメッシュの玉網を買ってくるようになり、私の玉網は隅っこに追いやられてしまった。メッシュの網は魚の体表が傷つきにくいのが利点だが、市販のものは枠がビニール被服の鉄製なので、いくら修理しても5年からせいぜい8年で寿命がつきる。当初買ってきた10本はもう消滅してしまい、その後買い足した数本も、今のところ私の修理の手がはいっている。そして少しづつではあるが、昔使っていたステンレス枠の玉網が日の目を見始めているのである。

378 なおし屋⑭デッキブラシ

ヨシノボリ
 デッキブラシは、プールの清掃等、水族館には不可欠な道具の一つである。桂浜でも常時10本ほどが稼動している。寿命はブラシが擦り減るまで使えば3~5年だが、たいていの場合は半年から一年も持たずに首が折れて、私の所にやって来る。ブラシと棒の取り付け部は、ほんの少しでも隙間があると折れやすいので、ビニールテープなどを巻き込んでからビスで止める。それでも緩んでまた折れてしまうことも多いが、私の所には太さが少しづつちがう棒(竹)が何本も老いてあり、ピッタリ合うのをさがして付け替える。こうして寿命が尽きる(ブラシが擦り減る)まで“なおし屋”は修理を繰り返すのである。

377 なおし屋⑬バケツ

ハナハゼ
 水族館では、魚や動物達の餌を入れ分けるために、多くのバケツが必要である。ほとんどが塩化ビニール製なので、紫外線による劣化で、割れやすくなる。ヒビが入って水が漏れると、バケツの機能は半減する。シリコンで止めてみたが、タワシで洗うと剥がれてしまう。ヒビだけで捨てるのはもったいないのでいろいろ考えているうちに、溶接にたどりついた。小型のガスライターであぶりながら、短冊状に切った古いバケツの破片を貼り付けるのである。穴があいてしまった物はちょっと無理だが、スジ状の割れはこの方法でピッタリ。バケツの寿命をかなり延ばすことが出来るようになったのである。ヤッター!。

367 なおし屋⑫マイクロチップリーダー

サツキハゼ
 「チップのデータを読みとらなくなった」とマイクロチップリーダーを持って来た。「さすがにこれは私の能力を超えてるぞ、メーカーに送れ」と言うと「問い合わせたが保証期間の切れたものは修理出来ないと言われた」とのこと。なるほどケースは接着されていて分解できない構造になっていた。カッターとドライバーで少しづつ切り開いてケースを外し中身を眺めたが、とても手におえそうにない。そこで本人に故障の状況を聞きなおした。「ペンギンに手をつつかれて、落としてしまってから読み取れなくなった」とのこと。落下なら断線かもしれないと思い、注意深く接続部を調べてみた。そして髪の毛ほどの線を巻いたコイルの先が、ほんの少しだけ浮いているのを見つけた。それを押さえてテストをすると、チップの数値があらわれた。すぐにハンダ着け、そしてケースはシリコンとビニールテープで止めて、みごと復活。落とした本人から「さすがなおし屋、ゴッドハンド」とおだてられた。ヤッター!。

375 なおし屋⑪加湿器

カニハゼ
 事務所の女の子が「お母さんの加湿器の電源が入らないけど…」と家から持って来た。たぶん簡単なヒューズか、断線だろうと思ったが、用心のために「壊してもいい?」と確認した。「保障期間も過ぎているので、ダメなら捨てるつもり」との返事をもらっておいてよかった。初めて見る機械なので分解にてこずったのである。加湿器なので水タンク・ヒーター・コントロール基盤などで出来ているのはわかっているが、部屋に置くので、デザインを重視したちょっと高価な代物で、止めネジの場所がわからない。張り合わせと思われる場所に細いドライバーを差し込んで、コネながらネジの場所を探ってシールに隠された4本のネジを見つけた。故障の原因は基盤内のコンセントのはずれ!。たぶん落下が原因と思われる。張り合わせ部分にドライバーによる傷が残ってしまったが、みごと復活。ヤッター!。

374 なおし屋⑩(続)扇風機

ヒレナガネジリンボウ
 「台から落ちて羽根が折れたけど…」と食堂係りのおばちゃんが扇風機を持って来た。折れた羽根を瞬間接着剤で付けてみたが、予想どうり数秒で飛んだ。もう一度付けて、今度は薄いプラ板を貼り付けて補強してみた。しかしこれも予想どうり、重量バランスが狂って、ブンブンうなるので危なっかしい。そこでこの羽根をあきらめ、古い扇風機(こんな時のために壊れた扇風機も捨てずにとっておいてある)の羽根を合わせてみた。メーカーは違うが、軸の太さはピッタリ。しかし軸受けの長さと、羽根の厚みが合わない。その羽根の先をサンダーで削り、軸受けはのこぎりで切り取って、みごとあわせることが出来たのである。ヤッター!。

373 なおし屋⑨扇風機

ハタタテハゼ
  扇風機は、毎年秋に羽根を外して、枠と一緒に洗ってしまい込むが、夏になって組み立ても動かないことがある。たいていの場合は、軸受けに少し錆が付いていて、回転しにくくなっているだけなので、潤滑スプレーを吹きかければOKになる。だがこれでは修理したとは云えない。しかし推しボタンスイッチが不調の時は、私の出番になる。原因はたいてい塩分で、基盤に付いたほこりを介して漏電を起こし、スイッチがスリープや誤作動を起こすことが多いのである。ここは私の得意の“基盤洗浄”しかない。分解して取り出した基盤を60℃ほどのお湯に漬け、洗剤をつけた歯ブラシで洗う。その後が肝心、充分に徹底的に乾燥させると、ヤッター!となるのである。

372 なおし屋⑧掃除機

キヌバリ
 「ホースが折れたけど、何とかなおらん?」と事務所のおばちゃんが掃除機を持ってきた。「どうしたらこんな所が折れるの?」と聞くと「足を引っ掛けてふみつけた、へへへ」と笑う。幸いなことに、ポッキリ折れただけで、粉々にはなっていないし、電気配線もかわしている。しかし力がかかる所なので、接着剤だけでは無理だし、当て木を添えてテープを巻くのも、形状の関係ですぐに再修理になるのは明らかだ。いろいろ考えながらながめているうちに、ホースの内側から添え木を当てることを思いついた。太さの合う塩ビパイプはなかったが、私には“とっておき”の材料があった。それは古いFRP製の釣竿である。ゆるやかな先細りになっているので、太さの合う所をさがして15cmほど切り出し、接着剤で内側にピッタリ貼り付けたのである。ヤッター!。

追伸 今週からイラスト係りは“美月ちゃん”が担当してくれることになりました。

371 なおし屋⑦冷蔵ショーケース

ドンコ
  海亀の餌を販売しているショーケースが冷えないと云ってきた。圧縮機は振動しているし、放熱パイプも熱いので、本体はまだ生きている。このショーケースは加温・冷却両用なので、切り替えスイッチか温度センサーの不良にちがいないと思い、いろいろ調べたがわからない。この手のショーケースは割高なので、新品は買ってもらえそうにない。夏休みを前にして、中古品を探すにしても時間がかかる。さしあたってその日は電源を切って、氷のブロックを袋に入れてやり過ごした。夕方気づくとケースの下が水浸し。“これだ”と思ってカバーを外すと予想どうりラジエターが氷結していた。翌日まで解氷させてスイッチを入れてみると、すぐにラジエターに霜がつきはじめた。しかし送風ファンが回っていない。そのファンのコードをたどって行くと突然回りはじめた。接触不良が原因でファンが止まり、ラジエターが凍結してしまっていたのである。これでこのショーケースは当分大丈夫だろう。ヤッター!。

370 なおし屋⑥温度計

 ゴクラクハゼ
 昔、温度計と云えば、アルコールか水銀の入ったガラス棒だった。しかし今は電気抵抗を利用した、液晶表示のデジタル型が主流となっている。ガラス棒型は、落として割れる以外はほとんど壊れないが、デジタル型はよく壊れる。特に海水用に使っている物は、塩分が悪さをするので基盤が漏電しやすく、度々壊れる。水槽にセットした温度計の表示が消えている場合、電池切れのことも多いが、電池を入れ替えても表示が出ないと、私のところに届けられる。そのときの修理法は決まっている。まず電池をはずし、ドライヤーで全体を暖めてみる。そして電池を入れなおす。一瞬でも表示が回復すれば、塩分による漏電に間違いないので、見込みがある。分解して基盤洗浄(これがワイヤレスマイクのところで書いた“最終手段”である)に取りかかる。60℃ほどのお湯と、洗剤をつけた歯ブラシでよく洗い、その後充分に乾燥させる。これで90%以上は復活である。ヤッター!。

369 なおし屋⑤冷凍庫

カワアナゴ
  エサ用の800ℓほどのストッカーが壊れてるとの報告が来た。-20度のはずの、アジのブロックがやわらかくなっているので、慌てて別の冷凍庫に移す。症状は、電源ランプが点灯していない。まず電源コンセントの電圧を調べ、次にヒューズを取り出してテスターで確認。コントロール基盤にコゲ跡などがないかじっくりながめ、それからコンプレッサー回路にテスターをあてる。普通、冷凍庫などはコンプレッサーが動いているのに冷えない。つまりガス抜けで寿命がつきてしまったものがほとんどである。しかし今回は電源が入らない「これは寿命ではないのでなんとかなるはずだ」と思いながら調べたのだが、原因がつかめない。私の能力の限界かなと思いつつ、昼食を食べてから“もう一度だけ”と思って電源から調べなおすと、ヒューズケースの中のハンダが外れているのを見つけた。ヒューズケースごと取り替えてみごと復活。ヤッター!。

368 なおし屋④ワイヤレスマイク

ムツゴロウ
  ワイヤレスマイクはイルカショーなどの必需品。一台四万円余りもするので、館長もおかんむり。私に「何とか治らんか」と言う。しかし分解したらわかると思うが、最近のこの手の機械は、基盤にゲジゲジ(集積回路)が数個はり付き、コンデンサーと抵抗が植えてあり、ディップスイッチと超小型バリコンと思われるものが並んでいる。この基盤に不良箇所があったとしても、設計者でも発見出来ないと思う。じっくりながめて、コゲあとなどがあればあきらめがつく。しかし目視で異常が見つかることはほとんとない。ここで私の“最終手段(後述)”が登場する。これまでの経験上、復活の可能性は五分五分である。失敗ならば廃棄しかないが、うまく復活すると「さすが“なおし屋”・ゴッドハンド」などの賞賛をうけることになる。ヤッター!。

367 なおし屋③ラミネーター

ヌマチチブ
  ラミネーターが壊れたと持ってきた女の子に説明を求めると「電源ランプがついたり消えたりしてから全々つかなくなった」と言う。これが私を迷路へ引きずり込んだ。この説明だと接触不良なのは間違いないと思い、接点とおぼしきところをさぐり、潤滑スプレーを吹きつけた。しかし反応が全くあらわれない。事務所用なので塩害の心配はないと思いながらも、コントロール基盤も取り出して調べたが、焦げ目などの異常は見られず、もうあきらめるしかないかなとも考えた。そこでしかたなく原点に返って(女の子の説明ではありえないのだが)この手の機械のアキレス腱である温度ヒューズを調べてみた。ヒューズ回路にバイパスをセットしてみると、電源ランプが点灯!。二個で150円の温度ヒューズを買ってきて、みごと復活。ヤッター!。

366 なおし屋②電動ドリル

イトヒキハゼ
 最近では電動ドリルは、バッテリー式が主流になっているが、直径10cm以上の穴をあけるには、バッテリーでは力不足で、大型の電動ドリルの出番になる。しかし古くてあまり使われなくなったこの手のドリルは、錆び付いて動かなくなっている(特に塩分の飛び交う水族館ではよくあること)ことがある。これはバイス(万力)で押さえてレンチで回し、給油すれば使えるようになる。しかしこれでは“なおした”とは云えない。それに桂浜のドリルはもっと古いもので、直流モーターのブラシが擦り減り、モーターが回らなくなってしまっていた。この手の部品は、インターネットや古道具屋をさがせばあるはずだが、私はまず水族館の物置をさがす。「道具類は使えなくなっても部品が取れるから捨てるな」と恩師(⑧もったいないの原点)からえ教え込まれている。その50年以上前に死んでしまったドリルから取り出したブラシがピッタリ!。見事復活したのである。ヤッター!。

365 なおし屋①蛍光灯

トビハゼ
 水槽照明用の蛍光灯は30台あまりあるが、新築(昭和59年3月)から15年ほど過ぎた頃から、一つまた一つと点灯しなくなりはじめた。分解しても原因はわからず。電球を新品に換えるとついてみたり、電球に手を触れただけでついたりして、私を悩ませてくれた。この蛍光灯は特注品で一台五万円余りとのこと。だから安定器は塩害対策がバッチリで丈夫なパックに収まっている。それ以外のところに断線か接触不良があるはずだと、電球の足をみがいたり、潤滑スプレーを吹いたりしているうちに、コードの継ぎ目に青錆びを見つけた。この部分を切り出してテスターを当てると、案の定抵抗値がコロコロと振れた。これがついたりつかなかったりの原因とわかり、この接点を継ぎなおすことで不調の蛍光灯は次々と出てきても、次々と修理することが出来るようになったのである。ヤッター!。

364 なおし屋(序)

マハゼブログ用
 もったいないおやじは、水族館の飼育員として間もなく43年になるが、その活動の半分以上は、お魚や動物達ではなく、設備や機械類の保守点検に費やされてきた。この“エコおやじの履歴書”にも、ポンプ(234~244ポンプのお話)や機械類(191~199長寿道具類)のお話を随分書いてきた。現在は使い捨ての文化が広がり、若い者は古い道具などは使いたがらない。壊れたらすぐ買い替えてしまう。私は物が無い時代に育ったし、就職してからも館長等に、機械類は修理しながら大切に使うことを教え込まれた。そして現在では“タカヤなおし屋”と呼ばれ、なんでも壊れたらまず私のところへ持って来る習慣が出来上がっている。時には不可能と思えるような物を生き返らせて“ゴッドハンド”などとおだてられることもある。前週までは“グヤジー”お話だったので、今週からしばらくは、修理に成功して“ヤッター”と喜んだ、自慢話を書いてみたいと思う。

追伸 今週より、事務員の“育美ちゃん”がイラストを担当してくれることになりました。
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