403 桂浜のスター達⑲ミンククジラ

  ミンククジラ2
 平成11年1月30日の事。私が通い続けている室戸の大敷網で、ミンククジラが捕獲されたところに出会った。解体作業を見物していて、骨が残りそうな気配だったので先長(船長)に聞いてみた。「骨はいらない。標本として残してくれたらオレもうれしい」と処理済の骨を市場の隅に集めておくよう指示してくれた。先長が記念品として持ち帰ろうとしていたクジラヒゲ(ヒゲ状の歯)を見つけて「それもちょうだい」とねだった。そしてその夜、桂浜の一角にこっそり埋めたのである。2年ちかく後に掘り出して漂白。頭・胴・尾などに4分割して木の台にのせた。標本展示は“手を触れないで下さい”が常識だが、私はあえて“さわってもいいです”と、かこいもなく、手の届くところに展示した。このクジラヒゲ付きでさわれる骨格標本は、桂浜の“看板スター”と私は思っている。
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402 桂浜のスター達⑱サケガシラ

サケガシラ2
 リュウグウノツカイから二ヶ月あまり、今度は「3mぐらいのタチウオのお化けが獲れた」との電話。タチウオなら、どんなに大きくても2mにはとどかないはず。もしリュウグウノツカイなら「ブルドック」の名前がでるはずだし、とにかく3mの魚ならば見るだけでも価値があると思って室戸へいそいだ。それはリュウグウノツカイの仲間のサケガシラだった。すでに死亡していたが、この巨体なら是非とも標本展示したいと思い、もらってかえった。しかし館長は「高さが50cmで長さが3mの展示水槽を作るとなると、100万円では収まらん」と難色を示した。それでもあきらめきれずに考えて「寝かせて見せる水槽なら…」と提案(129標本作り⑦サケガシラ)。「深さが15cmの水槽なら20万ぐらいで何とかなる」とのこと。大きな目玉のサケガシラはリュウグウノツカイと共に存在感のある標本で展示されているのである。

401 桂浜のスター達⑰リュウグウノツカイ

リュウグウノツカイ
 室戸の大敷組合から「ブルドックみたいな顔の魚が獲れた。すぐ来い」との電話。慌てて飛び出したが、その正体については全く想像がつかなかった。大きさは2mほどと言っていたが、とにかくめずらしい魚であることは間違いない。そして「すぐ来い」と云うことは“生きてるうちに引き取れ”とのサインだから、市場のタンクで、あまりいい状態ではないと思える。期待と不安の2時間で到着したとたん“あっ”と大声を出してしまった。それはなんとリュウグウノツカイ!。話には聞くが現物をしかも泳いでいるのを見ることが出来るなんて信じられない思いだった。平成10年11月24日。この魚は桂浜の大水槽で48時間余り呼吸をしていた。現在はホルマリン標本で展示されている。

400 桂浜のスター達⑯ウシエイ

ウシエイ
 ウシエイは私の出身地にあった鳴門自然水族館(昭和53年12月閉館)の、看板スターだった。中学校の水泳部が、水族館の海水プールを練習用に借りることがあり、通ううちに飼育員と親しくなり、餌を与えさせてもらったこともあった。直径1.5mほどの巨体は、中学生だった私に強烈な印象をあたえた(この経験が、私を水族館の飼育員へ導いた可能性が高い)。桂浜に来て希少種のウシエイに出会ったのは、30年ほど前に一度。2mほどの巨大な個体が入館したことがあった。しかし傷だらけですでに虫の息、数日間の命だった。そして昨年末のこと「大きなエイを釣った」との連絡で、運び込まれたのがウシエイだった。まだ1m足らずの若魚だが、桂浜の大水槽の中で存在感を示しはじめてている。

399 桂浜のスター達⑮ウツボ類

トラウツボ
 ウツボの仲間は丈夫で長生き。アジ・サバなどの切り身を餌に与えておけば、よく食べるので手間もかからない。水槽から這い出すのを防ぐには、土管や塩ビパイプを沈めておけば、仲良く頭を出して収まっている。時おり好物のタコを与えてやると、狂ったように噛みつき、回転しながら喰いちぎるさまは見ごたえがある。気をつけることは同居の種類わけ。大型のオナガウツボは細身できれいなモンガラドウシが好物で、丸呑みにしてしまう。その他、ゴシイウツボやトラウツボは、少し南方系なので、桂浜の水温では冬越しに失敗してしまう年もある。

398 桂浜のスター達⑭センネンダイ

センネンダイ2
 センネンダイは南方系なので、土佐湾では幼魚がごくまれに獲れるのみだった。しかし当館のセンネンダイは、70cmほどのものが定置網にかかったとのこと。すし屋のおやじが活き魚の状態で競り落としたが「あまりにきれいなので食べるのがかわいそう、一万円で引き取って」と電話してきたものである。熱帯魚店10~20cmほどのものが5千円ほどだったので、格安と思って私は飛びついた。まもなくそれから10年になるが、デップリ太っているのは同居の小魚を次々と捕食しているためと思われる。入館当初からの左目の白内障は、かなり進行してきてはいるがまだまだ元気。センネンダイの名に恥じない長寿で、大水槽に君臨しているのである。

397 桂浜のスター達⑬イサキ

イサキ3
 イサキの幼魚は、ウリボウと呼ばれるイノシシの子供と同様の縦じまがきれいだが、イノシシと同じく成長と共に消えてしまう。食味は最高で、高値で取引されている。30年ほど前の事だが、桂浜近くの漁港で幼魚が大量に釣れたことがあり、相棒(317~27釣り十番勝負・349~363釣勝負番外編)が5~10cmのウリボウを200尾ほど釣ってきた。10年ほどの間に大部分が40cm近くに育ったので、3㌧余りの水槽は、イサキで埋まってしまっているように見えていたこともあった。そのためか、時おり水槽から飛び出す事故があり、我が家の夕食のおかずになったこともあった。現在は1㌧水槽に、ウリボウを卒業しかかっている20cmたらずの個体が30尾余りと、大水槽に40cmほどに育ったおいしそうなのが、数尾泳いでいる。  

396 桂浜のスター達⑫ツバメウオ

ツバメウオ2
 幼魚の頃は、漁港の船溜りの隅などに、枯葉をまねて浮かんでいる。だから7~8月には漁港廻りをして、多い年には数十尾集めたこともあった(141玉網採集③ツバメウオ)。泳ぎがゆっくりなせいもあって、白点病にかかりやすい欠点はあるが、おとなしくて人馴れするので、飼いやすい魚である。馴らすと手から餌を取るだけでなく、指をかじりにくるようにもなる。しかし、少し南方系なので、桂浜の水温では冬越しが難しく、暖房水槽が必要になる。成長に伴って、色や体形が変化していくのもおもしろく、大型(40cm以上)になると、背びれと尻鰭を合わせて丸い形になり、見栄えがするようになる。現在桂浜の大水槽には、50cmほどの個体が5尾群泳している。

395 桂浜のスター達⑪オオニベ

オオニベ
 30年ほど前、小学生だった長男と二人で釣ったオオニベ(74釣り採集⑱オオニベ)は、23年余り展示(187長寿動物⑱オオニベ)されていた。ニベの仲間は地味で特徴がないが、オオニベは別格である。近縁種のシログチやコイチは30cm余りにしかならない上、鮮度落ちが早くて蒲鉾の材料にしかならないのに比べて、オオニベは1.2mにもなり、刺身は鯛の代用に使われ鯛よりもおいしいと云われている。しかし残念な事に、漁獲量が少ないせいで知名度が低いため、雑魚扱いの市場もある。おとなしくて飼いやすく長生きするので、水族館としてはぜひとも欲しい魚だが、入手は難しい。しかし、運よく2年ほど前に25cmほどの幼魚が7尾入館。現在は90cm近くに育って、大水槽の中でみごとな銀色の体を自慢げに群泳している。

394 桂浜のスター達⑩コショウダイ

コショウダイ
 私が入社した昭和46年には、70~80cmのコショウダイが数十尾、中央水槽に泳いでいた。しかし薄暗い水槽だったので、存在感はほとんどなかった。丈夫で長生きする魚だが、土佐ではコタイと呼ばれていて、食味の評判が悪く、漁獲量もあまり多くないので、食用としてはほとんど流通していない。だから飼育展示用として水族館に多く集まってきたのだろうと思う。旧水族館の中央水槽の底(深さは1.5mほど)に、30年ちかく息をひそめて住みついていたが、老齢のせいもあったのか、新築で移転した水槽になじむ事ができず、次々と消えていった。しかし定置網や刺し網などで、ボツボツ入館した新しいコショウダイが成長しているので、現在は40~70cmのものが十数尾。ガラス越しに横から見る水槽に入っているので、きれいな斜めの縞模様に、胡椒をふりかけたような優雅なすがたをひけらかし、存在感を示している。

393 桂浜のスター達⑨ハコフグ

ハコフグ
 ハコフグは釣り採集で時々手に入るが、積極的に欲しい時には潜水で玉網採集になる。泳ぎはゆっくりだが、追いかけると逃げ足はかなり速い。そこで、ゆっくり近づいてからパッと玉網を出すと、簡単に捕まえる事が出来る。桂浜沖の磯にはハコフグスポットがあり、そのつもりで行けば10尾ぐらいはあてになる。しかしハコフグで要注意なのがパプトキシンである。食べても無害とのことだが魚類には致命的。同じバケツに入った魚は全滅する。そのバケツが泡だっていたりすると、ハコフグも自分の出した毒で死んでしまうこともある。ユーモラスな泳ぎは、人気のあるフグの中でも別格である。しかし白点病になりやすい上、特殊な餌が必要らしく、よく食べているのにだんだん痩せてくる。最長で2年ほどしか飼育出来ないのが悩みの種でもある。

392 桂浜のスター達⑧クサフグ

クサフグ
 砂浜の多い桂浜周辺には、砂にもぐるのが好きなクサフグがたくさんいる。釣り採集では餌を盗るだけでなく、するどい歯で釣り糸を噛み切る(69釣り採集⑬クサフグ)ことが多いのでやっかい者でもある。しかし水族館にとっては、愛嬌のある顔立ちとユーモラスな泳ぎで人気があるし、病気になりにくいので、なくてはならない魚なのである。ある時ナマコやヒトデにさわれるタッチングプールへ入れたら面白いかも?と思って試してみた事があった。しかしこれは失敗だった。だんだん人馴れしてくると水中に入れた手に噛みついてくるようになってしまって、慌てて取り除く結果になってしまったのである。

391 桂浜のスター達⑦エビスダイ

エビスダイ
 オレンジ色で宝石のように輝くエビスダイは、私が一目惚れした魚の一つである。桂浜に来て、オンボロ水族館のヒビ割れた水槽を見て廻った時、薄暗い蛍光灯の下でもひときわ目に付いたのが、40cmほどのエビスダイだった。ところがこのエビスダイは入社後すぐに死んでしまった。館長の話によると「深海性の魚なので夏場の水温がぎりぎりで、まれに生き残るものもあるが、この魚は基本的には夏越しは出来ない」とのこと。旧水族館では、三月頃に底曳き網漁の船に発注し、毎年20~30尾入館していた。ところが八月末に、水温が27度になった頃から次々と死んでゆくのを指をくわえて見ているよりなかった。しかし冷房設備を設置した新館が出来た頃からは、エビスダイが底曳き網に入りにくくなり、入手が困難になってしまっている。現在は一尾のみだが、深海コーナーで存在感を示している。

390 桂浜のスター達⑥ツチホゼリ

ツチホゼリ
  中学校の水泳部(334桂浜への道④水泳部)で、練習と称して水中銛でチヌを追いかけていた時のこと。30cmほどのチヌのむこうに、見た事もない大きな魚がいる事に気付いた。銛を引き絞り、ゆっくり近づいたが、チヌは殺気を感じなかったのか、逃げる気配がない。私の狙いはそのむこう側の魚。息をつめてゆっくりゆっくり。その時チラッとこちらを見たその魚は、その瞬間にパッと消えるように泳ぎ去ってしまった。その光景は50年を過ぎた今も時おり夢に現れる。その魚の正体を知ったのはそれから10年後、桂浜に来て間もなくの頃。旧水族館の薄暗い中央水槽の底をゆったり泳ぐ姿を見て“これだ”と思った。ツチホゼリは、私が水族館人生にのめり込むための、大きな要因になっている事は否定できないと思う。灰色でゴマダラの優雅な姿は、私の夢の中にまで現れる、あこがれの魚なのである。

389 桂浜のスター達⑤ブリ

ブリ2
  旧水族館の大池(中央水槽)には、ウミガメやクエの他に、多数のブリが群泳していた。この水槽は、ガラス越しに横から見えるようになっていない上、館内の照明が暗いので、水面上に顔を出すウミガメ以外は非常に見えにくかった。しかしブリには存在感があった。ウミガメの餌用のキビナゴを数尾、池の中央あたりへ投げ込むと、バシャバシャと水しぶきをあげてブリが群がってくる。その姿は壮観だった。しかし昭和59年の移転新築からは、ブリが全く育たなくなってしまった。五月に数cmのモジャコを採集してきて、2~3ヶ月育てて、30cmちかくになったころになると、次々と死んでしまう。10年ちかく悩んだ末の結論が“地球温暖化”だった。夏場の水温が、彼らの限界を超えてしまっていたようだ。現在では、冷房の出来る水槽に入れて、25度C以下にしてやる事で、夏越しが出来るようになっている。

388 桂浜のスター達④ヒラスズキ

ヒラスズキ2
 ヒラスズキは、淡水域を好むスズキとちがって、外洋に面した磯まわりをすみかにしている。ヤセッポチに見えるスズキに比べると、体高が高く見栄えが良い。食味もスズキより格段に上である。そして何より、私にはヒラスズキに特別な思い入れがある。入社間もなく、竜宮下の磯で釣り上げたヒラスズキは、私を桂浜に引き止める“運命の魚(⑦運命の魚)”となったのである。体調81cmのヒラスズキはちょうど一年間飼育展示された。死亡時に確認したくて、解剖してみて驚いた。釣り上げた時に飲み込んでいた大き目のチヌ鈎は、ほとんど錆びも無く、囲心腔の中に納まっていたのである。こんな状態で一年間も生きていた事に関心した。以後ヒラスズキは、桂浜には無くてはならない魚として、現在も中央水槽で60~80cmのものが十数尾泳いでいる。

387 桂浜のスター達③マダイ

マダイ

  マダイは“お魚の王様”と呼ばれているので、水族館にはなくてはならない魚である。入手方法は、養殖業者・生魚市場などからの購入のほか、定置網や釣り(66釣り採集⑩マダイ)などの自家採集がある。丈夫で長生きしてくれるが、飼育中に色があせて黒っぽくなってくる。エビやオキアミを多く与えると、ある程度色落ちを防げるが、もう一つ厄介な欠点がある。それは眼球の飛び出し!。他の魚にも時々見られるが、マダイは特に多いようだ。展示を続けるには見苦しいので、取り除きたくなるのだが、玉網をいれるとパニックになって、水槽中の全部の魚が大暴れ。壁やガラスはもちろん魚どうしもぶつかって、傷だらけになってしまうことも多く、なんとも悩ましい。やはりマダイは赤くないと価値がないと思うので、黒っぽくなったり目玉の飛び出した大型のマダイは、ウミガメのいる中央水槽へ移し、展示水槽には、若くて赤いマダイを中心に、群泳させているのである。

386 桂浜のスター達②チヌ

  チヌ(クロダイ)
 チヌは小学生の頃、近所のおじさんが大物を釣り上げるのを見て以来、あこがれの魚だった。桂浜に就職して、館長に「チヌを釣って来い」と言われた時(⑤釣り採集)は、内心非常にうれしかった。当時(昭和46年頃)桂浜の釣り場にはチヌ(クロダイ)専門の釣り師が何人もいて、私はその人達(275恩人⑩宇田丸・276恩人⑪枝川丸)に教わり(技術を盗み)ながら腕をみがいた。チヌは25cmぐらいまでの小型の物は誰にでも釣れるが、30cmを超えたとたんに用心深くなるようで、釣り師とのだまし合いになる。餌をチョンとかじってプッと吹き出す大型のチヌを細い糸と小さな鈎で目をくらませる。ちなみに私の最大の大物は45cm。このチヌは約一年半ほど水槽内で勇姿を見せていた。失恋記念日(⑪天国から地獄)に釣り上げた魚だったので、いまだにそのころの記憶が残っているのである。

385 桂浜のスター達①クエ

  クエ
 昭和40年の夏。当時私は高知大学一年生。友人と桂浜に来て、水族館に入った。オンボロで薄暗い館内。中央の池(水槽)にいる海亀を見て、小学校の修学旅行でズボンをビショビショにされたこと(331桂浜への道③桂浜との出会い)を思い出した。観光客がエサを与えているのを見て、私も一皿10円(当時)のエサを買い、割り箸で海亀の前に差し出した。そしてふと、その下の水中を見てギョッとした。巨大なクエが大きな口を開けているのである。よく見るとその池には1メートル余りのクエが数十尾泳いでいた。6年後に入社してから、館長に聞いた話だが、それらのクエは、昭和20年代の後半から30年代のはじめにかけて入れた幼魚が、成長したとのこと。体長は1メートル以上、年齢は20歳以上、体重は30キロ以上のものが40尾以上いるとのことだった。

384 桂浜のスター達(序)

ユキフリソデウオ
  今週からは本来のお魚の話にもどります。“もったいないおやじ”は水族館の飼育員になって43年(昭和46年9月~)。その間に扱った魚は、直接(採集)・間接(購入)を含めて、およそ200種類余りと思われる。入社から13年間の旧館時代は、釣りや大敷網などの自家採集がほとんどで、文字どうり“土佐湾の魚”が中心だったが、昭和59年3月の新築後は、加温の出来る独立水槽も増えたので、熱帯系のカラフルな魚も多くなってきた。そんな中から、私の思い出に残る魚を“桂浜のスター”として紹介してみようと思う。しかし私の“独断と偏見”と云うより“好み”が反映される事になるので“私のお気に入り”としたほうが正しいかもしれない。ちなみにイラストのユキフリソデウオは、室戸の大敷網で捕獲されたけど、生きた状態で桂浜にたどりつかず、現在はホルマリン標本で展示されている。私の一番の“お気に入り”の魚である。
プロフィール

Author:もったいないおやじ
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