510 (続)桂浜百景⑩桂浜の花

花子
  桂浜の中央にある水族館のエントランスには大き目のプランターがあり、季節の花が植えられているが、水族館の係員が片手間に世話をしているので、手のかからない草花に限定されている。冬から春には定番のパンジー、夏場はサルビアやマツバボタンでなんとか色付けをしている。しかし桂浜自体となると植生は乏しい。龍馬像の下にハマユウの群落が少し、数年前にはその下部にハマヒルガオと薄紫色のハマゴウが根を広げ始めていたが、台風で根こそぎ流されてしまった。浜は殺風景だが山際には、秋になるとツワブキが黄色い花をつけ、その上部の崖にはノジギクの白い花が咲き誇る場所もある。
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509 (続)桂浜百景⑨桂浜の釣り

釣子
  最近ではほとんど見かけなくなったが、昭和の頃桂浜はキス釣りの本場だった。5月から10月頃まで、浜で投げ釣りをする人が絶えなかったのである。多い時には20~30本の竿が並ぶこともあった。私はウニ採集のために浜で泳いでいて、波打ち際に大群を見つけ、慌てて餌と竿を用意して、30㎝近い大物を50尾ほど釣り上げたこともあった。そんなキスの姿が見えなくなってもう20年以上になる。しかしこのところ毎年のように、6月頃になると竿を出しているお年寄りを見かける。大昔に大漁をした覚えのある人が、夢を追っていると思うのだが、クーラーボックスを覗くと、小型のキスが2~3尾しか入っていないのである。

508 (続)桂浜百景⑧凧あげ

凧子
 桂浜では、お正月などに凧あげをする風景を見かけることがある。しかし地形の関係で、桂浜は風が安定しない所なのである。冬場の西風は竜王岬に当たって回り込み、複雑な動きをするようだ。切符売り場から見ていると、子供は砂浜を必死で走って、少しは揚がるのだが、大抵はクルクル回ってストンと落ちる。しかし、なかには風を読むことが出来る人もいるようだ。桂浜の東の端から洋凧のゲイラカイトを高く揚げて子供と遊んでいた。この人は4年ほど毎年お正月明けに現れて、家族連れで凧揚げを楽しんでいたのである。

507 (続)桂浜百景⑦太平洋

洋子
  大波の太平洋は素晴らしいが、静かな海もまた魅力的である。正面80キロ先の室戸岬の右側に伸びる水平線。太平洋は空の蒼を映して広がる。大雨の後などは、西側の仁淀川と東の浦戸湾から吐き出された河川水で白濁するが、太平洋はすぐにもそれを飲み込んで、翌日には青さを取り戻す。雲が飛ぶ秋空には、その影を映してまだら模様の青い海が面白いし、梅雨時の鉛色の雲がそっくり映り込んだ黒い海も趣がある。太平洋は眺めているだけで癒されるのである。

506 (続)桂浜百景⑥桂浜の波

 波子
 母校、高知大学南溟寮の寮歌に“この浜(桂浜)寄せる大波は、カリフォルニアの岸を打つ…”との一節がある。学生時代には、桂浜が南東に開けた浜だと思っていたので、その正面になるのは、南米のチリかせいぜいパナマあたりだと思っていた。しかしある時、切符売り場で世界地図を広げたことがあり、桂浜の正面が室戸岬で、その先を延長していくと本当にカリフォルニアあたりにたどり着くことを確認したことがあった。実際の波が、カリフォルニアに到達するわけがないことはわかってはいるが、台風の大波が打ち寄せるのを見る度に、大声で歌った学生時代を思い出すのである。

505 (続)桂浜百景⑤冬

冬子
  桂浜の冬は寂しい。12月には北風が、1月になると西風が吹き抜けることが多くなる。しかし桂浜は陽だまりの浜。風はほとんど当たらない。水族館前のエントランスのポッドに植えられたハイビスカスは、寒気に立ち枯れているが、その周りのパンジーは「もうすぐ春だよ」と咲き誇る。冬場の寂しい桂浜が唯一賑わうのが元旦の“初日の出”である。最近はだいぶ少なくなってきてはいるが、それでも周辺の道路は、日の出(7時12分)から一時間以上、大渋滞が続くのである。30年ほど前のことだが、この“初日の出客”が水族館に入ってくれたら?と考えて、早朝開館を試みたことがあったが、完全な空振だった。

504 (続)桂浜百景④秋

秋子
  桂浜の秋は短い(私の解釈では秋は10月半ばから11月)。“春は海・秋は山”というのが観光の定番なので、桂浜も当然人出は少なくなる。桂浜は山に囲まれているが、海辺の特徴どうり松の木や潮風に強い常緑樹が多く、紅葉する木としてはハゼがポツポツとしか見えない。観光客を呼びたいお役所は“龍馬祭り(命日の11月15日前後の日曜日)”で盛り上げようとするるが、水族館にはあまりメリットが無い。切符売り場の正面、80キロ先の室戸岬を眺めながら、数少ない観光客に対応するのだが、昭和の終わる頃からは、中国大陸からの汚れた空気が流れ込むことが多くなり、岬の先端まできれいに見える日は、ほとんどなくなってしまっているのである。

503 (続)桂浜百景③夏

夏子
  6月の梅雨入りから10月中旬までが、私にとっての“夏”である。梅雨明けの強い日差しが砂浜を焼き、かげろうが立ち昇る。私が好きなのはその先に広がる太平洋。水平線がくっきりした静かな海もいいが、やはり夏の海は台風のうねりの来る海が楽しい。桂浜のシンボルである竜王岬に打ちかける大波は見飽きることがない。先端の海津見神社(海抜13m)の、はるか上まで波しぶきが上がり、観光客が逃げ惑う姿を見たこともある。「財布入りのバックが流された」「弟が波にさらわれた」などの駆け込みもあった。しかし夏場は水族館のかき入れ時。特に夏休み期間の一ヶ月余りで、年間の三割以上を稼がねばならない。のんびり海を眺めている暇はないのが実情なのである。

502 (続)桂浜百景②春

春子
  桂浜の春は長い。2月になると“光の春”、冷たい風が吹く時季だが、桂浜は東に開けた浜なので、雪おろしの北風も強い西風もほとんど当たらない。目の前の太平洋は陽の光に煌めく。その光に誘われて桂浜は観光シーズンを迎える。春本番は3・4月。最近は少なくなったが、昭和の後半の頃は遠足の小学生や幼稚園児が駆け回っていた。白装束のお遍路さんはチリチリ鈴を鳴らしながらの素通りだが、家族連れやグループが砂浜で弁当を広げている姿が見られた。5月になると土佐の太陽は真夏のエネルギーで照りつけるが、私の解釈では梅雨に入るまでが“春”の範ちゅうなのである。

501 (続)桂浜百景①ポケモンゴーロゴロ

ピカ子
  それは昨夏(正確には7月22日)突然に始まった。日の暮れるころになると、桂浜に若者たちが集まるようになったのである。そして夏休み中にどんどん増殖していった。みんな片手に“スマホ”なるものを持ち、それを覗きながらフラフラ歩く。浜辺の歩道にもいるが、多くは龍馬像周辺とその下部の広場でゴロゴロ。ベンチに座っている者もいるが、あてもなく(そのように見える)フラフラゴロゴロ、立ち止まってはまたフラフラである。なんでも桂浜には“レア物”がいるとのこと。夏休みが終わっても人数は増え続けた。帰りが遅くなった時など、車のライトが当たっているのになかなかよけてくれない。周辺の道路にも違法駐車が目立ち、帰路を塞がれて困ったことも。さすがに寒くなってからは人数が少なくなってきているが、そろそろ暖かくなって「またゴロゴロが増殖してきたら困る」などと考えるのは、年寄りのひがみなのだろうか。

500 (続)桂浜百景(序)

桂子
  エコおやじは桂浜水族館の切符売り場に座り続けて46年余りが過ぎた(旧館での13年も含む)。基本的には土・日・祝日だが、春・夏・冬休みなどにも座ることがあったので、年間130日余り。それから計算すると6000日近く桂浜を眺め続けていたことになる。以前にもこの切符売り場からの眺め(201~217桂浜百景)や人間模様(301~316鳥かごより)を書いたが、今回はその続編である。桂浜の春夏秋冬、太平洋の波・風などについて、エコおやじの偏見に満ちた目での感想を綴って見ようと思っている。
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