
パンドウイルカの太郎が死亡した時、館長に死体の処理を相談すると「ケンゾウに頼め」とのこと。“ケンゾウ”さんは館長の一の子分を自認する地元の漁師。軽トラックに積み込んで漁港まで運び、自分の船に乗せて沖合へ。出港前に館長婦人が「これに包んでやって」と水族館の旗を手渡してくれた。40分ほど走って桂浜沖10Kmほどの太平洋に水葬。一緒に飛び込んで薄緑色の水族館旗に包まれた死体が、弧を描いて沈んでいくのを水中メガネ越に見送っていると、なんだか変な気分になりかけた。その時目の前に竹竿が飛び込んできた。泳ぎには自信をがあり、溺れることなど夢にも思わなかった私だが、少しおかしくなっていたようだった。「お前、引きずり込まれてたみたいだったぞ」とケンゾウさん。竹竿のタイミングがもう少し遅かったら、私は太郎に引っぱられて、太平洋に沈んでいってしまったかもしれなかったのであった。
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