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272 (再)恩人⑥サミーデビスジュニヤ

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  植木や盆栽が趣味の寿一館長は、庭木作りが得意なサミー・デビスジュニアそっくり(日焼けした顔に、ギョロ目)のお百姓さんと組んで、近場の山などからヤマモモやアオキ(クロガネモチ)の木を掘り出しては、自分の畑に移植していた。私は度々その手伝いをさせられた(⑥飼育員の仕事)のである。その関係でこの人からチェーンブロックを使っての、大きな庭石の移動などを含め、植木屋さんのノウハウを学んだ。中でも印象に残っているのが、山道のブランコ通過である。細い山道が数日前の雨に流されて50cmほどエグられていた。あきらめて引き返すのかと思ったら、ロープを持ち出し斜面上の太い木の枝に結び、トラックの片側に結びつけた。なんとブランコの要領で片輪を宙に浮かせて通りぬけてしまったのである。感心している私に「高谷君、道具さえあれば不可能はないよ。頭とウデはこんな時に使うんだ」と聞かされたように記憶している。

  この人の助手で、半世紀前に山から掘り出したヤマモモやクロマツは、今も水族館で葉を茂らせている。

  
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271 (再)恩人⑤浪やん

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  浪やんは寿一館長の一の子分を自認していた。水族館のすぐ近くに住んでいて、水道関係の仕事をしていたので、ポンプや水廻りに精通した人だった。旧水族館時代のポンプ類は、すべてこの人がボランティアでめんどうを見ていた。私はこの人に付いて、配管や接続を含めてポンプについての知識を学んだ。カップリングのスリ合わせやグランドパッキンの押し込みなど、理論は十分理解したつもりだが、技術的なことについては私のいいかげんな性格もあって、まだまだこの人のレベルにとどかない。それともう1つ、この人からは道具や機械を修理しながら大切に使う、もったいない(⑧もったいないの原点)の心を教え込まれたと思っている。

  朝出勤すると機械室でカンカン音がする。見ると「夜中に館長に呼ばれた…」と浪やんがポンプを組み立ていたこともあった。

270 (再)恩人④松ちゃん

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   旧水族館時代の一番大きな機械は、15KWの圧縮ポンプの付いたアイスキャンデー製造機だった。昭和30年頃に、中古のアンモニアガス式冷凍機を入れたとのことだった。他にダツトサンのエンジンを使った非常用ポンプと50KWの非常用発電機があった。松ちゃんは、この3つの機械と電気の係だった。発電機はガバナ(回転数調整機)の調整を教わった。ダツトサンのエンジンは、私が夜番をしていて焼け着かせてしまったのを分解修理してもらった。アイスの機械は「アンモニアガスは扱いが微妙だから」と私にはさわらせてくれなかったが電気配線については、この人からたくさんのことを学ぶことが出来たのである。

  旧館時代の電気配線は裸電線を使っている所もあり、今では絶対に有り得ないような、危険な所もあった。

269 (再)恩人③スエやん

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  大工のスエやん(③師匠の教え)は寿一館長のおさななじみで、旧水族館の補修の一切をまかされていた人である。私は入社初日(②初日)に、この人に弟子入りさせられた。この人と共にオンボロ水族館の屋根に上り、40年余りの潮風に痛めつけられた、トタン板や外観を修理した。コンクリート水槽の、ガラスの張り替えを手伝ったこともある。館長の性格を知りぬいていたスエやんは「館長がイロイロうるさい注文をつけてきたら、その場はハイハイと聞いておけ。あとで自分の思ったとおりの細工をしておけばいい」と云ふようなウラ技も教えてくれた。ノコギリやカンナがけの技術については、私の性格もあって上達しなかったが、いろんな場面での“大工さん的”な考え方や発想は、かなり勉強させてもらったと思っている。

  私はスエやんの最後の弟子。彼が引退する時、使い込んだノミやカンナ引き取らせてもらった。

268 (再)恩人②冴子夫人

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  私が入社するまで寿一館長の冴子夫人は、魚類の説明板を担当していた。やさしいタッチの水彩画(ちぃさな浜辺の水族館のなんちゃって課長30~37・174~181)で、簡単な解説がついていた。入社して間もなく「これからは説明板をまかせます。もっと学術的なことも入れて作って下さい」と云われた。私は絵心が全くないのでこれには困った。イラストが得意な後輩のM(なんちゃって課長)が入社するまでに2・3枚だけ作った覚えがある。その後夫人は私をおかかえ運転手にして、自分の趣味の“能”に没頭していた。若くして亡くなったが私を可愛がってくれて、イヤがる館長を説得して私の仲人を引き受けてくれたのである。

  寿一館長はプリンスグロリアに乗っていたが、冴子夫人は私を運転手に、ボロボロの軽トラックでお出かけしていた。

267 (再)恩人①寿一館長

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  「浦戸大橋の開通に合わせて水族館を新築するので、是非とも来て欲しい」との寿一館長の言葉(① 面接)につられて入社したが、新築までは13年も待たされた。しかし今思えば、その13年間が私を育ててくれたようである。館長は自分の趣味(と云うより道楽)の植木(⑥ 飼育員の仕事)や庭石の移動を手伝わせ、築40年を過ぎたボロボロの本館を修理させ、電気・ポンプの修理も指示した。私はお魚の飼育はそっちのけで、このような雑用をこなし続けたのである。何度も辞めようと思ったが、そんな私を見越して「スマンがもうちょっと頑張ってくれ。新築したら雑用はなくなるから」と新築の遅れを申し訳なさそうに云ふ寿一館長を信頼して、ついてきたおかげで現在があると思えるようになってきている。

  当初は寿一館長に召し使いのように扱われて非常に不満だったが、時間と共に性格もわかり、この人に育てられたと思うようになってきたのである。  

266 (再)恩人(序)

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  ネタ切れで「もうこのブログは終了にしたい」と云う私をイラスト係が「まだまだダメです」と、許してくれない。しかたなく無理やり絞り出したのが、今回の“恩人シリーズ”である。桂浜に来て40年余り。思い返せば数多くの人々から学びながら、支えられながらの“水族館人生”だった。このページの最初の頃に登場した人々を含め、その恩人達の一部を紹介してみたい。かなり失礼な表現があるかも知れないが、すべては遠い昔(30年以上前)のお話である。御本人(御遺族を含め)の目に止ることはあるまいと思って好き勝手に書く予定だが、もしもの時は「ごめんなさい」。

  登場する15人(一組は除く)のうち、生存を確認出来ているのは4人だけである。

265 (再)大敷網漁の魚達⑲インバ

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  カスザメは時たまにしか入網しないが、その名のとうりカス扱いである。しかしカスとして捨てられる魚が水族館の狙い目なのである。丈夫でおとなしいので扱いやすく、水槽に入れなくても、海水をかけてやるだけでかなりの時間の輸送に耐えられる。インバと云ふ名は、昔土佐で“インバ”と呼ばれていた外套に似ていることから名付けられたらしい。なかなか餌付かないが、小魚を釣糸に結んで根気よく頭の上あたりを引き回していると、突然バコッと食いついてくるようになる。砂に潜ってほとんど動かないので、存在に気付かずに見過ごされてしまうことの多い魚でもある。

  私は食べたことはないが、実はこの魚は非常に美味しいらしい。

264 (再)大敷網漁の魚達⑱クロエイ

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  夏場に獲れるカラスエイは私のお気に入りの魚である。アカエイに似ているが、まっ黒なので大敷ではクロエイと呼ばれている。底に沈んであまり動かないアカエイとちがって、外洋を遊泳するタイプのエイなので、水槽内を泳ぎ回ってくれて見ばえがする。しかし何よりも、この魚のエサの食べ方が面白い。泳ぎながら食べるので、逃がさないようにヒレを丸めて包みこむようにして食べる。好物のイカを吻のあたりに近づけるとクルッと反転して腹を上に向け、左右のヒレを寄せて包み込むように口に運ぶしぐさは、可愛くて心がなごむ。毒棘にさえ注意していれば、丈夫で飼いやすい魚である。

  普通エイの仲間は腹側は白いのだが、このエイは遊泳性のためか腹も黒い。

263 (再)大敷網漁の魚達⑰アオタ 

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  アオタと呼ばれるヨシキリザメは室戸の大敷には常連である。大きいのは2m近い(118危険生物⑥サメ)のを見ることもあるが、私には手が出せない。50~60cmの小型がねらい目で、なんとか飼育出来ないかと連れて帰った。しかし酸欠に弱く、多くは水槽トラックでの2時間に耐えられず、桂浜に着いた頃には死後硬直になっていることも多かった。サメ類は飼育がむずかしいと聞いていたのを実感させられたものである。しかしある時、大型のメスが市場へ陸揚される途中でバラバラと胎児を産み落す場面に出合ったことがあった。その仔を13尾つれ帰ってみたら、予備水槽で15日間頑張ったことがあった。餌に付くまでには至らなかったが、このあたりにサメ類輸送・飼育のヒントがあるかもしれないと、次のチャンスを待ち続け、もう10年以上が過ぎてしまった。

  六月に出産直前のヨシキリザメを狙って集中して大敷網に通ったこともあったが、出会うことはなかった。

プロフィール     ロリコンのおじん

もったいないおやじ

Author:もったいないおやじ
桂浜水族館を縁の下から支えて半世紀。

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