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7 運命の魚

  私の考えていた飼育員とは、かけはなれた現状に悩んでいた。進路を変えるべきか、もう少し頑張ろうか。考えているうちに眠れなくなり、真夜中に下宿を抜け出した。唯一の飼育員らしい仕事を頑張ってみようと考えて水族館へ忍び込み、館長の愛犬に気付かれないように釣具を持ち出した。釣り場に着いて間もなく、冷たい雨がシトシト降り出した。それから2時間余り、夜も明けてそろそろ切り上げようかと思ったころのこと、ついにあの大物が食いついた。沖へ走ってエラ洗いをする姿が見えた時は、足がふるえた。20分ほどかけて足元まで寄せたが、玉網には入らない。磯から磯へ飛び移り、砂浜まで引き寄せるのにさらに10分ほどかかった。防寒の雨合羽でグルグル巻き。出勤して来たおみやげ店のおばちゃんに、赤んぼうを見せるように、顔だけ見せて水族館へ走る。この体長81cmのヒラスズキは、その後1年余り水族館の住民になった。そしてこの魚が、私を桂浜に引き止める“運命の魚”になったと思っているのである。(昭和46年12月23日)

  この大物は釣り針を飲み込んだ状態のまま水槽に入れたので、死亡したときその鈎が気になって解剖してみた。なんと心臓のすぐ横に心臓より大きな鈎が収まっていた。この状態で1年間も生きていたことには驚かされたものである。
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桂浜水族館を縁の下から支えて半世紀。

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